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杉山城

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杉山城は、別名雁城ともいう。

新編武蔵風土記稿、杉山村の項には次のように記されている。(意訳)
壘蹟 村の中ほどにあり、小高い丘の上の1,500坪くらいの地をいう。一説に、昔、金子十郎家忠の居住したところというが詳しいことはわからない。
またの伝えに、上田氏家臣、庄主水が住んだところともいう。隣村、越畑にも庄主水居住の地があり、当国(武蔵)七党の内、児玉党の庄權頭廣高庄太郎家長等の子孫ではないか、また北条家家臣にも庄式部少輔、庄新四郎の名が見え、もしくはこれらの一族ではないか。

築城者は金子十郎家忠、庄主水が挙げられる。
決して的外れな考察ではないと思う。現在の遺構と時代が合わないという説は、多くの城に通用する説である。
金子十郎家忠築城説は、編纂時の聞き取り調査を行った際、金子姓の方が多く住んでいたためと思われる。

この城は高度な縄張りであり、「築城の教科書」「戦国期城郭の最高傑作のひとつ」とされてきた。
発掘調査の結果、15世紀末から16世紀初頭に近い前半であることが判明した。出土品には輸入陶磁器、国産陶磁器、石製品、銭貨、錘、鍛冶滓、壁土、炭化財等があった。
また、広い範囲で火災があった後、廃絶されたものと思われることも判明した。

長享の乱は、山内上杉氏と扇谷上杉氏による争いであり、山内上杉氏の鉢形城と、扇谷上杉氏の河越城の間にある嵐山町須賀谷原では長享2年(1488)に激戦があった。
杉山城は須賀谷の旧城(松陰私語)とともに、山内上杉氏が扇谷上杉氏に対抗するために築かれた(修築された)城と考えられる。

玉ノ岡中学校を目安にアプローチする。

積善寺の境内を通り抜け、大手口へ。
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大手口には案内板が設置されている。
国指定史跡
指定 平成20年3月28日
杉山城跡
この城跡は、戦国時代の築城と推定される典型的な山城です。総面積は、約8ヘクタールにも及び、山の高低差を利用して十あまりの郭を理想的に配置しています。まさに自然の要害と呼ぶにふさわしい埼玉県でも屈指の名城と評価されています。現存する遺構の保存状態も非常に良く、複雑に入り組んだ土塁や堀によって構成される城構えには当時の高度な築城技術が偲ばれます。「馬出し」や「桝形」の塁線を屈曲させて構える「横矢掛かり」の多用はその典型とされるものです。また、城の立地についても、北方に越畑城・高見城と連絡し、西方全体に鎌倉街道を見下ろすという絶好の条件を備えています。当時の社会情勢から判断して、松山城と鉢形城とをつなぐ軍事上の重要拠点の一つであったと考えられます。築城年代や城主名等に不明な点も多いですが、地元では、松山城主上田氏の家臣杉山(庄)主水の居城と伝えています。
この城跡は、すべて私有地であり地権者のご理解とご協力によって公開されているものです。文化財保護にご理解いただき、利用、見学をしていただくようお願いいたします。(縄張図)
平成13年3月
嵐山町教育委員会

目の前に広がる城は圧巻である。

大手口は出郭の内側、外郭の入口に構えられている。ここに嵐山町発行のパンフレットが置かれているので入手したい。

続いて外郭に入る。

復元木橋が設置されていた頃もあったが、現在は階段が設置された掘底を渡り馬出郭へ。
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複雑な横矢掛かりの小口を経て、南三の郭へ。

続いて南二の郭。

続いて井戸郭。井戸には石の蓋が置かれ、使用できない。
廃城時の措置というが、埋めることは検討しなかったのであろうか。
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井戸郭から本郭へ入る木橋を渡ったと思われる。(現在、木橋は架けられていないため迂回する。)

その他、本郭への進路は搦手口の北二の郭から、または根小屋があった場所と思われる場所から出郭、東二の郭を経て入る場合が想定される。
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東二の郭からの進入路は想像以上に甘い気がするが、根小屋集落を防御としたのだろう。

本郭の北西は厳重な構えであったと思われ、土塁、掘とも高低差が大きくなる。
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特に、本郭内部の櫓台と思われる高台等から、鎌倉街道、街道の宿駅等が見渡せる。
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搦め手口に繋がる北二の郭、北三の郭も尾根に沿って形成されている。

参考資料:比企郡嵐山町 国指定史跡 比企城館跡群 杉山城跡
現地案内板
地図はこちら
by t_samanosuke | 2016-11-01 07:00 | 城館【嵐山町】

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by 田中 正純